オスの犬の性成熟が始まると、検討しなければならないのが去勢手術です。去勢手術を受けさせることを決めても、「痛そう」「犬がかわいそう」といった理由で、愛犬が心配になりますよね。
しかし、去勢手術は犬が健やかに暮らしていくうえでとても大切な手術です。
去勢手術を受けることで、犬の性衝動によるストレスの軽減や、生殖器系の病気の予防にもつながります。
また、飼い主にとっても、去勢手術で犬の望まない妊娠が避けられることは大きなメリットになるでしょう。
去勢手術は犬の体にメスを入れるため、犬への負担が大きいです。
そのため、手術後にはしっかり愛犬をケアしてあげる必要があります。
本記事では、頑張って手術を受ける愛犬の手術後の様子や、ケアのポイントについて紹介します。
本記事を読んで、ぜひ去勢手術後のケアの参考にしてください。
去勢手術後の流れ
1.去勢手術後、犬が麻酔から覚めるのを待つ
2.犬の体調に問題がなければ退院
3.激しい運動やシャンプーは控え、抜糸まで自宅看護
4.手術から約1週間後に抜糸
麻酔から覚めた直後
犬の去勢手術は、日帰りで行うことが多いです。
犬が全身麻酔から目覚めた後に、体調に問題がなければその日のうちに連れて帰ることができます。
日帰りの場合、手術後は自宅で安静にしながら傷のケアと体力の回復を待ちます。
体調が万全になるまでは、激しい運動や散歩は控えるようにしましょう。
去勢手術は日帰りが多いですが、動物病院によっては犬の体調に問題がなくても1泊入院を選べることもあります。1泊入院では、去勢手術の費用に入院費がプラスされるので気をつけましょう。
また、犬にとって一番安心できるのは自宅なので、動物病院という慣れない環境はストレスになります。
しかし、動物病院は手術後のケアや経過観察もしっかり行ってくれるので、万が一体調が急変した場合にはすぐに対処してもらうことができます。
手術後の犬の状態をしっかり聞いて、もし日帰りか1泊入院を選べる状況であれば獣医師と相談してみましょう。
退院~抜糸
退院後は犬の体に負担がないように運動量をコントロールして、傷口のケアや薬の管理をしてあげることが大切です。
去勢手術後は犬が傷口を気にして舐めてしまうことがありますが、傷口を舐めると菌が入り込むので舐めさせないようにしましょう。そのためにエリザベスカラーをつけて、傷口を保護する必要があります。
しかし、中にはエリザベスカラーを嫌がる犬もいるので、様子を見ながら装着してあげましょう。
そして手術から数日後に抜糸を行いますが、手術方法によっては抜糸がないこともあります。
抜糸がなくても傷口のケアは必要なので、エリザベスカラーは必ずつけてあげましょう。
傷が治るまで
抜糸の有無に関わらず、エリザベスカラーは傷口の赤みが引くまで必ずつけましょう。
犬が舐めたことによって傷口が化膿すると、さらに傷の治りが遅くなります。
「かわいそう」と思ってエリザベスカラーを外してあげたくなりますが、飼い主は犬のために心を鬼にして我慢しましょう。
去勢手術の傷は、約1週間〜10日ほどで治ります。
傷が治るまでは散歩も控えめにして、犬の体に負担がかからないようにしてください。
去勢手術後の回復の様子
犬にとって、動物病院で手術を受けるということは大きなストレスになります。
そのため、去勢手術後はできるだけ自宅でリラックスさせてあげることが大切です。
犬が安静にできる環境を整えてあげましょう。
自宅で安静中に万が一傷口が開いてしまったら、すぐに動物病院に連絡しましょう。
食事・水分補給について
去勢手術後は体の負担によって食欲が落ちることがあるので、食事や水の量は普段の半分くらいを目安に、
様子を見ながら与えましょう。
もし食事を嫌がるようであれば、無理に与える必要はありません。
少しずつ体力が回復していくにつれて、食欲も戻ってきます。
食欲が完全に戻ったら、普段通りに近い食事や水の量を与えるようにしましょう。
ここで気をつけたいことは、去勢手術によって性ホルモンの分泌が抑えられるため、犬の代謝量が低下しているということです。
代謝量の低下によって太りやすくなるので、普段通りの食事量では犬が太ってしまうことがあります。
そのため、食事の量は完全に普段通りではなく、手術後の犬に合った量を与えなければいけません。
去勢手術後の犬の食事量については獣医師に確認し、犬が肥満体質にならないように気をつけましょう。
シャンプーやお風呂について
犬のシャンプーは、傷口の赤みが引くまでは避ける必要があります。
また、抜糸が必要な手術を受けたのであれば、抜糸が終わるまでシャンプーは禁止です。
どうしてもにおいが気になる場合は、傷口に触れないように濡れタオルでそっと体を拭いてあげましょう。
散歩のタイミングについて
去勢手術後の散歩のタイミングは、犬の体調によって異なります。
犬が散歩に行きたがったり、外でしか排泄しない犬であれば獣医師に確認するとよいでしょう。
散歩の許可が出た場合でも、激しい運動は禁止です。
特に抜糸までは軽めの散歩で済ませて、傷口に負担がかからないように配慮してあげましょう。
体調の変化について
去勢手術後の犬は、手術を受けたことや病院という慣れない環境にいたストレスで、繊細な性格の犬ほど元気がなくなってしまうことがあります。
たとえば、以下のような変化が見受けられます。
・食欲や元気がない
・便がゆるい
・排便、排尿の様子がおかしい
・精神が不安定になっている
犬の様子が普段と違って心配な時には、獣医師に連絡して様子を見てもらいましょう。
去勢手術後の心・性格の変化
犬は去勢手術を受けると、気持ちが安定して性格が変わることがあります。
一方で去勢手術後も心や性格に変化がない犬もいるので、愛犬の様子は毎日しっかり確認してあげるとよいでしょう。
オシッコのスタイルについて
去勢手術を受けると、オシッコのスタイルに変化が見られる犬もいます。
犬は性成熟を迎えると、足をあげてオシッコをするようになり、自分のにおいを周りにアピールします。
これはマーキングと呼ばれ、自分の縄張りを守るために行われるものです。
散歩中に他人の家の玄関や壁、電柱などにマーキングをしてトラブルに発展することがあるので、できるだけマーキングは癖づけない方がよいとされています。
マーキングをやめさせるために去勢手術をする飼い主もいますが、マーキングが癖になった後に去勢手術をしても、なかなか改善が見られないことも多いです。
しかし、マーキングが癖になる前に去勢手術を受けると、犬はしゃがんでオシッコをするスタイルを覚えてくれる可能性があります。
もし、マーキングを癖づけたくないのなら、性成熟を迎える生後7ヶ月くらいまでには去勢手術を受けるとよいでしょう。
性格の変化について
犬のもともとの性格にもよりますが、去勢手術後に臆病やシャイの度合いが増す犬もいます。
去勢手術によって性ホルモンが抑えられ、闘争心や縄張り意識が薄れて穏やかな性格になるからだと考えられています。
もし、性格が変わることがあってもガラリと変わるわけではなく、ほとんど変化が感じられないことが多いようです。
まとめ
去勢手術は、基本的にお腹を切ることはしないので、メスの避妊手術や他の手術に比べてリスクは少ないといえます。
それでも手術前の説明書や同意書の内容を見ると、全身麻酔のリスクや手術後の体調を考えて、飼い主の不安は消えないかもしれません。だからと言って不安な顔をしていると、犬は人の気持ちに敏感なので、飼い主の不安な気持ちは愛犬にも伝わってしまいます。
手術後に愛犬が安心できるように、そして回復期をリラックスして過ごせるように、愛犬を落ち着いて迎えられる準備をしておきましょう。