「愛犬の去勢手術を考えているけど、いつ頃受けさせたらいいのかわからない」
とお悩みの飼い主さんも少なくありません。
犬を迎える時には、去勢手術や避妊手術はセットで考えてあげたいものです。繁殖の予定がなければ、去勢手術は仔犬のうちに受けた方がよいでしょう。また、仔犬のうちに去勢手術を受けることで、性衝動による問題行動の抑制や、マーキングの習慣化を防ぐ効果が期待できます。
では、犬はどれくらいの時期に去勢手術を受けることが適当なのでしょうか。
本記事では、去勢手術の時期を考えたい飼い主さんに、去勢手術を受ける時期や発情期の問題行動について解説します。
去勢手術とは
去勢手術は何をしているのか
去勢手術とは、オス犬の精巣を取り除く外科的な処置のことです。
手術の際は犬に全身麻酔をかけてから、精巣付近の皮膚を切開します。
皮膚の切開だけで精巣を取り除くことができるので、比較的回復が早いことが特長です。
犬への負担も少なくて済むので、日帰りで手術を受けることができます。
去勢手術は、以下の流れで行われます。
1.術前検査
2.手術
3.術後管理
4.退院〜抜歯
すぐに手術を行うのではなく、まずは獣医師による検査があるので安心です。
去勢手術の流れについては、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
犬の去勢手術って何?手術の内容と目的【初めての飼い主さん向け】
シニア期になって発生する病気を予防する
去勢手術によって、生殖器に関わる病気を予防できることも大きなメリットです。
精巣を取り除くので、「精巣上体炎」などの精巣に発生する病気は発症しません。
特に去勢手術を受けていない犬は、シニア期に入ると前立腺に関する病気が発症しやすくなるので注意しましょう。
その中でも特に発症しやすく、死亡リスクが高いのは「前立腺肥大」です。
前立腺肥大の治療方法は去勢手術を受けることですが、手術を受けたとしても前立腺はすぐには小さくなりません。
そのため、犬がまだ若いうちに去勢手術を受けておくことが、前立腺肥大の一番の予防方法です。
犬が高齢になってからの病気を予防するためにも、前向きに去勢手術を検討しましょう。
発情期の行動を抑制
去勢手術は、犬の発情期の行動を抑制することにもつながります。
オスの犬は性成熟を迎えると、性衝動によって問題行動を起こすことが多くなるのです。
たとえば散歩中やドッグランでメスの犬を追いかけたり、マーキングやマウンティングをするなどの行動があげられます。
去勢手術を受けると性衝動が起こりにくくなるので、これらの行動を抑制することが可能です。
去勢手術のおすすめの時期
病気の予防や発情期の行動を抑制するためには、できるだけ早いうちに去勢手術を受ける必要があります。
では、目安となる時期は一体いつ頃なのでしょうか。
犬の成熟期前が大前提
去勢手術は、犬の成熟期前に受けた方がよいでしょう。
犬は、一般的に生後6ヶ月〜12ヶ月で性成熟を迎えます。
個体差はありますが、小型犬の方が成熟期が早く、大型犬は成熟期まで時間がかかる傾向があります。
いずれにせよ、去勢手術は犬が成熟期を迎えるまでに受けるとよいでしょう。
性衝動による問題行動が起こらなくなり、飼い主も犬自身も、お互いにストレスを減らすことができます。
早すぎる手術は不可能?
時期が早すぎる去勢手術は、あまりおすすめできません。
海外では、仔犬の譲渡前に早期不妊去勢手術を行っているところもあります。
早期不妊去勢手術とは、生後8〜16週齢の犬に対して行う去勢手術です。
日本では、早期不妊去勢手術はほとんど行われていません。
犬がある程度まで成長していない時期に去勢手術を行うと、発育不良を起こすことがあります。
そのため、生後6ヶ月以降に受けさせることが一般的です。
去勢手術は、犬の体がしっかりと成長してから受けるようにしましょう。
ただ、犬の成長は個体差があるので、具体的な時期についてはかかりつけの動物病院で相談することをおすすめします。
マーキングの習慣化を目安にする
去勢手術は、犬のマーキングが習慣化する前に受けましょう。
犬は性成熟を迎えると、縄張りを主張するためにマーキングを始めます。
マーキングが習慣化すると、散歩中の犬はあちこちにマーキングをします。
一度マーキングが習慣化すると、やめさせることは難しいでしょう。
たとえ去勢手術を受けたとしても、マーキングの習慣は残ってしまいます。
そのため、愛犬にマーキングの兆候が見られたら、習慣化する前に去勢手術を受けましょう。
乳歯の本数を目安にする
犬の乳歯の本数も、去勢手術の目安になります。
犬の乳歯は、生後8ヶ月くらいですべて生え変わります。
この時に自然に生え変わらない乳歯は、動物病院での抜歯が必要です。
抜歯は犬に全身麻酔をかけて行うので、去勢手術と同じタイミングでまとめて行うと犬の負担も少なく済むでしょう。
もし去勢手術と一緒に抜歯をするなら、すべての歯が生え変わる生後8ヶ月を待ってからにしましょう。
発情期のオス犬の行動とは
オス犬の発情期はあるのか?
実はオスの犬には、発情期はありません。
オスは、発情期のメスの尿に含まれるフェロモンのにおいに誘発されて発情します。
そのため、メスの犬に近づかなければ、自分から発情することはありません。
発情したオスは、マウンティングやマーキング、攻撃性が高くなるなどの変化が見られます。
発情期の問題行動
発情中のオスに見られる問題行動として、以下のような行動があげられます。
- マウンティング
- マーキング
- 遠吠え
- メスの犬を追いかける
これらの行動は、犬が発情しなければ行わない行為がほとんどです。
特に、マウンティングやメスの犬を追いかけるなどの行為は、ほかの犬にケガをさせる危険性があります。
そういった危険を回避するためにも、去勢手術は受けるべきだといえます。
発情期のトラブル例
オスの発情期には、以下のトラブルが起こる可能性があります。
- メス犬をめぐって、オス同士で喧嘩をする
- 攻撃性が高くなり人に噛みついてしまう
- 散歩中の街中やドッグランでメス犬を追いかける
- マウンティングをして相手の犬にケガをさせる
ほかにも発情期には予想外の行動をとることがあり、トラブルになりかねません。
犬は自分の性衝動を抑えることができないので、うまく発散ができずストレスが溜まります。
去勢手術によって、こうしたトラブルの回避や犬のストレス解消などの効果が期待できるでしょう。
まとめ
本記事では、去勢手術を受ける時期についてまとめました。
発情期の様子を見たことがない飼い主さんには実感が湧かないかもしれませんが、発情したオスはストレスが溜まりやすく、性衝動を抑えることができません。
犬のためにも、適切な時期に去勢手術を受けるようにしましょう。
また、去勢手術は乳歯の抜歯や歯石除去、潜在精巣などの全身麻酔を使う外科的な処置と同時に行うことが可能です。
乳歯の抜歯など、一緒に受けさせたい処置があれば早めに獣医師に相談して、手術の時期を決めましょう。