犬の去勢手術って何?手術の内容と目的【初めての飼い主さん向け】

オスの犬を飼い始めると、一度は勧められる去勢手術。
「去勢手術が必要なのかよくわからない」「犬にとって危険ではないの?」
と不安を感じる飼い主さんもいらっしゃると思います。

「手術」と聞くとリスクを考えてしまいがちですが、去勢手術にはリスクを上回る大きなメリットがあります
犬を飼うときには、人間と同じようにかかりつけのお医者さんを見つけましょう。動物病院には健康な犬も定期的に通って、予防接種や健康診断を受けます。仔犬の時期であれば、その際に去勢手術を勧められることが多いです。

本記事では「去勢手術のことはなんとなくわかったけどやっぱり不安」という方に向けて、去勢手術の流れと目的、リスクについて紹介します
どうしても去勢手術への不安が拭えないという方は、この記事で不安を解消しましょう。

去勢手術とは

去勢手術とは、外科的な処置で犬の精巣を取り除く手術です
犬に全身麻酔をかけて、精巣付近の皮膚を切除します。
メスの犬に行う避妊手術のようにお腹は切らないので、手術後は回復が早いといわれています。
そのため、基本的に日帰りで手術を受けることが可能です

体にメスを入れることや全身麻酔によるリスクはありますが、繁殖をする予定がないのであれば、去勢手術を受けることをおすすめします
去勢手術を受けることによって、生殖器系の病気を防げたりマーキングが減る、犬のストレスが減るなどのメリットがあるからです。

去勢手術をする目的

一般的には、犬の生殖器系の病気を予防したり、発情期の行動をコントロールするために去勢手術をします
去勢手術で精巣を取り除くことによって、犬の繁殖能力は失われます。
繁殖能力が失われたオスは、発情期のメスが近くにいても興奮することがなくなるので、性的興奮による問題行動を抑制することが可能です。

また、精巣を摘出するので「精巣上体炎」「精巣腫瘍」などの生殖器系の病気を予防できます。
ほかにも、すでに精巣の疾患がある場合に、治療目的で去勢手術を受けることもあります
病気の予防や治療といった点では、去勢手術は特に大きな効果が期待できるでしょう。

このように、去勢手術はさまざまな目的をもって行われます。
全身麻酔や手術自体のリスクはありますが、手術を受けることで病気の予防や治療、問題行動の抑制など多くのメリットがあります
もし去勢手術を受けるか悩んでいるのであれば、前向きに検討しましょう。

去勢手術の流れ

去勢手術は、以下の流れで行われます。

1.事前検査
2.麻酔
3.手術
4.術後管理
5.退院〜抜糸

①事前検査

事前検査では、犬が手術や全身麻酔に耐えられる状態か、何か疾患を抱えていないかを検査します。
主に以下の検査が行われます。

・身体検査
・血液検査
・レントゲン検査
・超音波検査

検査結果によっては、手術の延期や中止が決まることも。
獣医師は事前検査でしっかりと犬の状態を把握して、万全の状態で手術に臨みます

②麻酔

事前検査で問題がなければ、全身麻酔を行います。
去勢手術で使用する全身麻酔の薬は、1種類だけではありません。
犬の健康状態や年齢に合わせて、いくつかの薬を配合します。
さまざまな薬をバランスよく配合することによって、犬は痛みを感じずに、ゆっくり眠りながら手術を受けることができるのです
全身麻酔の効果を最大限発揮するため、麻酔前は12時間以上の絶食が必要です。
水分補給も禁止されることがあるので、事前に確認しておきましょう。

③手術

全身麻酔後に、剃毛と消毒をしてから実際に手術を行います。
手術では精巣付近の皮膚を切開して、睾丸を摘出します
手術時間は約30分〜40分です。
手術中も、心電図モニターなどを用いて犬の健康状態をリアルタイムでチェックします。
そのため、万が一問題が起こったとしても、獣医師がその場で対処することができます。

④術後管理

去勢手術が終わりしばらくすると、犬は全身麻酔から覚めます
手術がすべて終わったからといって、まだ安心はできません。
手術後も、獣医師と看護師によって犬の健康状態はしっかりと管理されます
数時間の経過観察を行い、問題がなければ自宅に帰ることができます。
帰宅後は、飼い主による術後管理が必要です
もし手術後の様子を見て、犬の体調面で不安があれば1泊の入院を受け付けてくれる動物病院もあります
自宅での術後管理が不安であれば、獣医師に相談してみましょう。

⑤退院~抜糸

退院後、犬の体調が戻っても無理は禁物です。
犬の体に負担がかからないように、運動量のコントロールや傷口のケアが必要になります。
退院後のケアや回復の様子は以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

愛犬の去勢後の流れと回復の様子。これだけ気をつければ安心

去勢手術と同時に行われることがあるもの

犬の去勢手術では、複数の処置が同時に行われることがあります
よく同時に行われるのは、乳歯の抜歯などの歯の治療や、潜在精巣の処置です
これらの処置は全身麻酔が必要なため、去勢手術と同時に行うと犬の負担が少なく済むのです

全身麻酔の意味とリスク

犬は人間と違い、治療のために動かないでいることができません。
犬が自由に動くまま処置を行うと、重大な事故につながる可能性があります。
そのため、歯の治療や検査などでも全身麻酔を使うのが一般的です
全身麻酔は犬が安全に治療を受けるために必要不可欠ですが、副作用などのリスクがあります
同時にできる処置はまとめて行って、全身麻酔の回数をできるだけ少なくしてあげたいですね。

乳歯の抜歯

抜けるべきなのに抜けなかった乳歯は、歯周病の原因になります。
生後7ヶ月頃を過ぎても残っている乳歯は、自然に抜けることがほとんどありません。
もし愛犬に乳歯が残っているのであれば、動物病院での抜歯をおすすめします
乳歯の抜歯には全身麻酔が必要なので、去勢手術と同時に行うとよいでしょう

潜在精巣(停留精巣)の処置

潜在精巣の処置も全身麻酔が必要なため、去勢手術と同時に行うことがおすすめです
オスの犬は、通常は生後30日前後で精巣が陰嚢内に降りてきます。
しかし、まれに精巣が陰嚢まで降りてこないことがあり、これを潜在精巣といいます。
潜在精巣は将来腫瘍化する可能性が高いので、手術で取り除くなどの処置をするのが一般的です。

まとめ

去勢手術前に、不安を感じる飼い主さんは少なくありません。
手術や全身麻酔にはリスクがあるので、愛犬に去勢手術を受けさせる決心がつかない方もいらっしゃるでしょう。
しかし、去勢手術を受けることで病気の予防や、性衝動による余計なストレスを感じることがなくなります
さらに繁殖予定のないオスが性衝動のストレスを発散できない状態は、健康とはいえません。
ストレスが溜まると犬の攻撃性が高まることもあり、犬にとっても辛い状態が続きます。
そのため、去勢手術にはリスクを上回るメリットがあるといえるでしょう
信頼できる動物病院を選び、去勢手術によって犬と飼い主自身が安心できる環境づくりを行いましょう。

おすすめの記事