日本において、飼い主の事情で手放された犬や猫は、引き取り手がいなければ最終的に殺処分されるという悲しい現実があります。罪もないペットたちが人の都合で命を奪われるのは、なんともいたたまれないことです。
そこで、行政自体も犬や猫の殺処分を減らし、最終的には0にすることを目指した活動をしています。平成26年6月に環境省が発表した「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」。そのアクションプランは、行政が各自治体、動物愛護の団体、NPO、ボランティア、事業者と連携して取り組んでいくプランの推進として、保護犬や保護猫の里親探しをするべく譲渡会を開催しています。
飼い主に手放されたペットは、心に深い傷を負っています。各団体は、今後ペットが同じ思いをしないよう、新しい飼い主となるための条件を施設や団体によってさまざまに設けています。
この記事では、「里親になるための心構え」をまとめました。
犬や猫を新しく迎えたいと考えている方は参考にしてみてください。
犬や猫の譲渡会とは
動物愛護センターやNPO団体などは、野良犬や野良猫、さまざまな事情で人に捨てられ行き場のなくなった犬猫を保護しています。保護されたペットたちは、新しく家族として迎えてくれる里親を待っているのです。
多くの施設・団体が譲渡会という形で、里親希望の方と犬猫のマッチングの場を設けています。
ですが、犬猫を飼いたいからといって、どんな人でも引き取れるわけではありません。譲渡会では、原則無料で希望する里親に譲渡しますが、その分厳しい条件があります。
里親になれる条件とは、せっかく保護して命を助けたペットたちが幸せに暮らせる家かどうか、大切に育ててくれる人かどうかなどが主な項目です。これ以上、不幸なペットの連鎖ができないように保護した犬や猫たちの目線で対応しているのです。
譲渡会へ行く前の心構え
国も掲げている「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」は、人と動物が共生する社会として、もっとも身近な動物である犬猫の殺処分を減らしていくための活動です。
自治体や動物保護団体に引き取られた犬猫の譲渡メインに取組みを進めてきた結果、殺処分数が10年で7分の1と大きく減少しました。しかし、依然として全国で約3万頭を超える犬猫(令和元年度)が殺処分されているのです。※
いま、犬または猫を家族として迎えたいと考え中の方は、ペットショップへ行く前にぜひ譲渡会も検討してみてください。もし、保護されたペットを迎えたい決意ができたならば、事前に以下の項目をみて、迎える環境に当てはまるかチェックしてみてくださいね。
※2021年9月8日「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト事務局」環境省フェイスブックページより引用
家族全員が同意しているか
犬や猫は「家族」として迎えてほしいのが譲渡の最大の条件です。
そのためペットを飼うことを同意していない家族が一人でもいれば引き取りは難しくなります。また留守が多く、一日中ケージで飼わなければならなかったり、部屋や家具を汚されるのが嫌という理由で外でしか飼わないという人は、里親としては不向きと見なされるでしょう。
自宅は飼う環境に適しているか
・アパートやマンションが、ペット可であるかを確認しましょう。たとえペットOKのマンションでも体重制限や頭数が決められている場合も多いため、事前に管理会社に聞いておきます。加えて、近隣に迷惑がかからないよう室内飼いができることも重要です。
・すでに犬または猫がいるお家は、お互いの相性を見るためのトライアル期間があります。いまいるペットの友達としてという観点より、新しく迎えるペットと性格の相性が合うかを念頭に入れて選ぶようにしましょう。先住犬、先住猫の去勢・避妊手術が済んでいることが条件の場合もあります。
・日中にペットと過ごす時間を十分に取れることも大事です。もし家族の皆が通常の仕事で家を開ける場合は、少なくとも9〜10時間はペットが留守番することになります。家を開ける時間が長いと、保護されたペットは
また置いていかれると恐怖を感じ、体調を崩したり問題行動を起こしてしまうことも。普段の生活スタイルから飼い主さんが留守にする時間があまりに長い場合、飼育環境に適していないと見なされる可能性があります。
・各団体では、動物愛護の精神にのっとった活動をすることを目的としています。そのため、譲渡したペットたちが譲渡先の家庭で元気に幸せに過ごしているかの経過監察をする場合があります。慣れるのに時間がかかりそうなペットは、家族に心を許して慣れるまで自宅訪問を設けることもあるでしょう。
高齢の方や一人暮らしの方は、後見人やフォロー体制があるか
とくに高齢者の方が里親になる場合は、アクティブな犬やきれい好きな猫の世話が毎日きちんとできるかどうかをいまいちど検討してみましょう。また今後、自分自身に病気の発症など何かあった時のために、犬猫の世話が継続してできる後見人やフォロー・サポートをしてくれる人を決めて双方が認識しておくことが大切です。
予防接種と犬の登録をする
犬の健康を維持するためには、ワクチン接種と狂犬病、フィラリア検診など毎年定期的に動物病院に通わなければならないことが出てきます。
また譲渡後、現在居住している市区町村に出向き、飼い犬であることの登録をすること(マイクロチップ装着の場合もあり)、年1 回の狂犬病予防注射を接種し、犬の鑑札と注射済票を犬に装着することが法律により義務付けられています※2。
これらは、基本的な飼い主の義務とされているので、できない方は譲渡を断られる可能性があります。
※2「犬の鑑札、注射済票について」厚生労働省ホームページより引用
どんな状況になっても最後まで飼う覚悟が求められる
犬猫の寿命は人間と比べるとはるかに短いですが、人間の歳でいうと80歳を超える15歳以上でも元気に暮らしている子もたくさんいます。自分自身の人生を100%予測することはできませんが、ペットを迎える前には
ペットの生涯も考えることがとても重要です。
ペットを飼える環境条件は満たしているから、すぐに迎えられる!といった目先のことだけではなく、何年も先のことを想像してみましょう。たとえ海外への引っ越しが決まっても家族なので連れて行くのは当然のことなのです。
どんな状況、どんな理由があっても、家族を途中で手放すことは嫌ですよね。犬や猫を一度迎え入れた以上、飼えなくなる状況は本来こないはずなのです。それなのに、自分が決めて迎え入れた家族を、自分の手で手放すといった無責任な行為をする人が後を絶ちません。
この記事をご覧いただいている方は、決してペットを不幸にすることがないよう、一人ひとりの心がけが大切になることはもうお分かりいただけたと思います。ペットを迎える際には、最初から自分と家族とペットの未来を見据えて、迎える覚悟が必要でしょう。
まとめ
保護されたほとんどの犬や猫は、自分が信じて愛情をたくさん注いできた飼い主から捨てられたという傷を深くもっています。なかには、自分が捨てられた時のことやその後保護されるまでの生活環境にトラウマをもつ子もいます。
犬や猫は人間の感情を読み取ることができ、人と同じ感情をもち、人の性質を見極めることもあります。過去に捨てられたり、人に虐待を受けたペットは警戒心が強くなったり、自分を守るために噛み付くことさえあるのです。
犬や猫は長く人のパートナーとして共存してきた動物です。人に対しての愛情はまっすぐで本来威嚇をする気質をもつ子はいません。いるとすれば、人が裏切ったことで、傷つき、防衛本能が働いて人に対して凶暴性をみせる場合があるということです。
犬や猫が人に向ける愛情が感じられない場合のほとんどが、愛する飼い主に捨てられたケースの子達です。
迎え入れる準備ができたら、迎え入れたい動物や種類の性質や特性をよく勉強しましょう。
そして捨てられた犬や猫には、二度と同じ思いをさせないように、寿命が来る最期まで愛してあげてくださいね。あなたが愛した子は、その愛情以上に、生涯あなたに愛情を与えてくれるはずです。